第3回国連人権理事会普遍的定期的審査日本政府報告書へのパラレルレポート      

2017年3月29日

Japan National Group of Mentally Disabled People (JNGMDP)

全国「精神病」者集団

World Network of Users and Survivors of Psychiatry (WNUSP)

世界精神医療ユーザーサバイバーネットワーク

 

 

2UPRの審査におけるアルメニアの勧告147-86は未だ日本では履行されていない[1]

 

 

はじめに

  1. 日本は障害者権利条約を2014年に批准したが、批准後も障害者権利条約に違反した法制度や政策がたくさんある。とりわけ精神障害者、認知症のある人、知的障害者は批准に向けた新たな法制度からも取り残されている。

 

障害者権利条約批准後も、多くの法制度と政策が障害者権利条約に違反している

  1. 現在パリ原則に従った政府から独立した障害者権利条約の国内監視機関はない。政府は障害者基本法の障害者政策委員会が障害者権利条約33条の国内監視機関であると説明している。しかしこの委員会は政府から独立していない。内閣府のもとにあり、委員会が管理できる、自らの事務局スタッフもおらず、予算もない。
  2. さらに、条約批准前に障害者基本法が改正されたため、障害者基本法には障害者政策委員会に対して障害者権利条約の国内監視の任務を定める条文はない。政策委員会の主な任務は障害者基本計画の調査と審査およびそれに基づいて政府に勧告することである。そして基本計画の履行状況について監視することがその任務である。したがって委員会は障害者権利条約の国内監視機関ではない。
  3. 成年後見人制度利用促進法の目的は後見人制度の利用者を増やすことであり、政府は後見人制度こそが唯一の精神障害者、知的障害者そして認知症のある人の保護の道具であると認識している。約19万人が今現在成年後見人制度のもとにあるが、政府は、これはあまりに少なく人権擁護のためにはこの数を増やさねばならないと主張している。
  4. 障害者権利条約12条は締約国に成年後見人制度を廃止し、すべての障害者が法の前に平等に認知されることをもとめている。したがって成年後見人制度自体と成年後見人制度利用促進法は障害者権利条約12条に違反している。
  5. 日本はOECD諸国の中で精神病院の病床するうおよび平均在院日数ともに第一位である。約30万人の入院患者が精神病院に降り、1年以上の入院患者は約20万人、そして20年以上の入院患者が36000人も存在する。またこの20年間で新規の強制入院は2から3倍に増えており、入院患者の約四割が強制入院患者である。しかし政府は強制入院は医療保障と患者の健康と福利を保障するものと認識しており、精神病院の病床や強制入院そして入院全体を減らしていく有効な政策がない。
  6. 精神保健福祉法改正案が2017年2月28日に国会に上程された。逮捕された人は完全責任能力があるとして2017年2月24日に起訴されたにも関わらず。政府は改正の目的はやまゆり園事件[2]のような犯罪を防止するためであると説明した。
  7. 政府は常に、精神保健福祉法および強制入院の目的は患者自身の利益と説明してきたにも関わらず、精神保健福祉法の改正は精神保健サービスの目的を患者自身の利益から治安へと根本的に変えるものである。
  8. 法案は措置入院患者[3]にのみ「支援計画」を作るという新たな仕組みが含まれている。これは実際にあるあるいはあるとみなされた障害に基づく差別である。自傷他害のおそれのある障害のない人はたくさんいるが、彼らはこうした扱いを受けないしそもそも強制入院自体されない。これは精神障害者に対する差別である。
  9. 退院前に強制入院を命じた地方自治体はケースマネージメント会議をする義務がある。そして当事者をそこに参加させる義務はない。
  10. 私たちはこの過程で時間がかかり、強制入院期間が伸びるのではないかと案じている。そして本人がこの計画を拒否したら、拒否を撤回し同意するまで拘禁され続けるのではと案じている。
  11. 精神保健福祉法案によれば地方自治体は「地域精神障害者支援委員会」を作る義務がある。しかしこの委員会のメンバーは真に支援者ではなく、保健所、病院スタッフ他のサービス提供事業所のスタッフそして警察が入っている。さらに重大なのは精神科医が違法薬物依存症者と固い信念によって犯罪を企てる患者を発見した時は、この委員会のメンバー間では警察も含み患者のセンシティブな個人情報が本人の同意なしに共有されるということである。
  12. それゆえ精神保健専門職は守秘義務を破らなければならなくなる。さらにその個人情報は転居してもなお転居先の自治体に送られ、この情報共有の期間は不定期である。
  13. 法案の監視システムは地域をあたかも精神病院か刑務所に変えてしまう。全日常生活がサービス提供者、精神病院スタッフ、そして警察に監視され管理されるようになってしまう
  14. この監視と管理を嫌う精神障害者は障害年金や生活保護を含むいかなるサービスも医療も拒否せざるをえないこととなり、ホームレスとなったり、放置の中で死んだりしかないことになりかねない。
  15. いかなる支援も支援計画も本人自身の意志と好みによるものでなかればならない。そして医療は当事者の自由なインフォームドコンセントに基づいて提供されなければならない。
  16. そして特に「固い信念」を持って犯罪を企てること自体は未だ犯罪ではないそれゆえ警察は介入すべきではないしできない、だからこそ警察はやまゆり園事件の被告を精神保健体制に送ったのだ。精神保健体制もそうした介入をするなら、精神病院は不定期拘禁センターとなってしまう。精神科医は人の信念を矯正してはならないしできない。もしそうしようとするなら、精神保健体制総体が保安処分となり、私たちは反社会的人格障害とレッテルを貼られた人が精神病院に強制入院させられ不定期拘禁されるのではないかと恐れる。この被告を精神保健体制に送ったことこそが最大の過ちであり、これは精神保健体制の問題ではない。
  17. 障害者権利条約は締約国に、意志に反して障害者を、障害を根拠として拘禁することを禁止するよう求めている、そしていかなるリハビリーテーションも医療も自発的でなければならないと求めている。障害者権利条約はまた障害者に対する非差別を求め、またプライバシーの権利とありのままでいることの権利の尊重を求めている。精神保健福祉法自体が障害者権利条約に反しており、そしてこの法案もまた障害者権利条約違反である
  18. 政府は、2018年から2020年の障害福祉計画のガイドラインを今作っている。しかし政府はここで精神病院の長期入院患者脱施設化を削除し、さらに1年以上の入院患者の6割は「重度かつ慢性」であり、退院も地域生活もできないとして、地域支援の数値目標は4割の長期入院患者のためとして立てるとしている。さらに政府は1年以上の長期入院患者の数は減らしていくが、10%は退院できないとして、2025年の長期入院患者のための病床の数値目標を10万床としている。障害者権利条約19条は誰もが施設で暮らすことを強いられてはならないと宣言しており、したがってガイドラインは障害者権利条約に違反している。

勧告

20. パリ原則に従った国内人権機関あるいは障害者団体の推薦する委員を含んだ障害者権利条約の国内監視機関の創説

21. 民法の成年後見人制度の撤廃と成年後見人制度利用促進法の廃止

22. 精神保健福祉法の撤廃と精神病院に対しての総合的な脱施設計画を作ること

 

[1] 147-86  障害者権利条約の有効な履行を継続すること(アルメニア) 日本政府が受け入れている

[2] 2016年7月26日障害者施設の元職員が障害者施設やまゆり園をおそい、19人の障害者を殺し、26人を傷つけた。2016年2月彼は国会の議長に手紙を送り、そこで彼は攻撃計画を宣言し、障害者は殺されるべきと言った 2016年2月19日から3月2日まで彼は自傷他害のおそれがあると鑑定され精神保健福祉法29条により強制入院させられた。

この襲撃は障害者に対するヘイトクライムである。しかし政府は厚生労働省内に強制入院制度の検討チームを事件後即2016年8月に発足させた。

[3] 自傷他害のおそれによる強制入院

 

付録
国連人権理事会に対して送付した2017年に恣意的拘禁に関する作業部会の日本訪問を要請する手紙
https://wgadcometojapan.jimdo.com/app/download/12847227036/jinkenrijikaiate_onegai.pdf?t=1474169123

UPR original English

 

「尊厳を再優先に」 同意のない強制的精神科治療の廃絶に向けたアピール

「尊厳を再優先に」

同意のない強制的精神科治療の廃絶に向けたアピール

2015年10月10日(土)世界精神保健デー

ジュネーブ(2015年10月8日)

国連の障害者の権利に関する特別報告官Catalina  Devandas-Aguilarと、健康への権利の特別報告官Dainius Pûrasの二人は本日あらゆる形態の同意のない精神科医療の廃絶を各国に呼びかけた。

世界精神保健デー[i]に先駆けて、独立専門家の二人は、発達障害と精神障害のある人々が尊厳をもってそして人権を尊重されて扱われることを確保するために、恣意的拘禁、強制収容、そして強制医療に終止符を打つことを各国政府に求めた。

「施設への監禁、身体拘束されること、そしてよくある独居拘禁、薬物を強制的に注射されること、これらは障害があるあるいはあるとみなされた人々が、本人の同意なしにされることのほんの一部を描いたものです。これらは身体的精神的インテグリティに対して重大な結果をもたらします。

世界的に、発達障害や精神障害者をもった人々は差別、スティグマそして周辺化に直面し、精神保健施設と地域社会の両方で感情的そして身体的虐待に屈従させられています。そして同意のない精神医療の介入の結果として世界各地で毎年何十万もの人々が尊厳と権利を侵害されています。

そして精神病院、他の特別な施設あるいはその他の同じような施設に恣意的に自由を奪われて拘禁されています。

拷問に値しかねない強制医療を行われるならそれは尊厳と両立することはありえません。各国は緊急課題としてこうしたことをやめ、治療やケアの選択権あるいは拒否権を含んだそれぞれの人の自律を尊重しなければなりません。

暴力と虐待からの自由なしには、自律、自己決定、地域社会への包摂そして、意思決定過程への参加、人の固有の尊厳は、空疎な概念です。医療行為として精神医療の名のもとに広範に受け入れられ正当化されている膨大で広範囲な侵害について国際社会は認識する必要がある。

同意のない収容と治療の背後にある『医療的必要性』という概念は科学的根拠と確固たる基準に欠けている。精神医療での強制の使用という伝統は『まず害すなかれ』という原則に反しており、もはや受け入れられるべきではない。

障害者権利条約は精神保健政策とその実践においてパラダイムシフトをもたらす絶好の機会を提供している。今年の精神保健デーにおいて、今までにもまして、人の尊厳とインテグリティを尊重した地域に根ざしたサービスの新たなモデルと実践を創出する必要を強調する。

効力を持った障害者権利条約を踏まえて、サービス利用者政策決定者そして精神保健含めたすべての利害関係者の間で、人権を基礎とした、条約の基準がもたらした課題に対する回答となるべき解決に向け取り組む仕事について対話を開始する、絶好のタイミングが今である

私たちは各国に、発達障害や精神障害を持つ人が、尊厳を持って対応され、いつもそれらの人の決定が尊重される権利を提供され、さらに必要とするその決定が有効に伝達されるための配慮と支援を得る権利を提供されることが確保されるために、すべての恣意的拘禁、強制収容そして強制治療を廃絶することを呼びかける」

 

 

 

Catalina Devandas-Aguilar氏 (コスタリカ) は、2014年6月に国連人権理事会によって、最初の障害者の権利に関する特別報告官に任命された。彼女は ディサビリティ ライト アドボカシー ファンド、国連の障害者権利条約の担当部署、さらに世界銀行、それらの戦略パートナーシップにおいて国内地域そして国際的に障害問題について広範に取り組んできた。彼女は主に障害のある女性と障害のある先住民に焦点を当てて取り組んできた。

詳細は以下

http://www.ohchr.org/EN/Issues/Disability/SRDisabilities/Pages/SRDisabilitiesIndex.aspx

 

 

Mr. Dainius Pûras (リトアニア) は2014年人権理事会によって到達しうる最高の基準の身体的精神的健康についての特別報告官に任命された。Mr.Pûras はヴィリニュス大学の社会精神医学小児科センターの所長であり教授である。彼はまた公衆保健政策とサービスの改革過程にこの30年間積極的に参加してきた人権擁護活動家でもある。彼はとりわけ子どもの権利と精神障害者の権利そして他の弱者の権利に焦点を当てて活動してきた。

詳しくは以下

http://www.ohchr.org/EN/Issues/Health/Pages/SRRightHealthIndex.aspx

 

国連の特別報告官は国連人権理事会の「特別手続き」として知られている活動部門に属している。特別手続きは国連人権機構で最大の独立した専門家による部門であり、特定の国家の状況あるいは世界のすべての地域の主要なテーマ別課題を扱う、理事会の独立した調査と監視メカニズムである。特別報告官の専門家はボランティアとして働き国連の職員ではなく無報酬である。彼らはいかなる政府、組織からも独立しており、個人としての能力において奉仕する。

詳細は以下 英語原文
http://www.ohchr.org/en/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=16583&LangID=E#sthash.z5MfKxiy.dpuf

 

[i] 世界精神保健デーは国連が後援しているもので、精神保健の課題について世界的に講習の啓発啓蒙のために毎年10月10日に行われている。ことしてのテーマは「精神保健における尊厳」である

(邦訳 山本眞理)

 

障害者権利条約委員会 14条ガイドライン

最終版に若干の手直しありました

注引用付きのPDFファイル誤字修正しました 2017年4月3日
ご注意を 修正を2015年12月21日にアップいたしました
誤字ほか修正しました 2015年12月25日
修正しました 2015年12月27日

強制入院強制医療を一切認めず廃止を求め、心神喪失抗弁や保安処分も廃止を求めています
以下から日本語訳ダウンロード(邦訳 山本眞理)

14条ガイドライン邦訳  PDF ファイルダウンロード

注引用付きPDFファイル  PDF ファイルです

 

最終版英語原文は以下から
GuidelinesArticle14 (5)


なお本文注34の文書番号誤りのようです

正しくは   A/HRC/30/37

United Nations Basic Principles and Guidelines on remedies and procedures on the right of anyone deprived of their liberty to bring proceedings before a court – Report of the Working Group on Arbitrary Detention

 

障害者権利条約14条に関しての声明 

障害者権利条約14条に関しての声明 

障害者権利条約委員会

2014年9月

人身の自由と安全誰にでもあるもっとも大切な権利の一つである。特に条約14条に従い、すべての障害者とりわけ精神障害者には自由の権利がある

障害者権利条約委員会は、2011年4月の第5回会議において締約国の報告書を審査し始めて以来、体系的にこの条約の権利を正しく履行する必要について締約国に注意喚起してきた。14条に関する委員会の法的な判断は、以下のようにそのいくつかの要素に分解するとより理解されやすい

  1. 障害を基礎とした拘禁の絶対的禁止 実際にある、あるいはあると認識された障害を基礎としての自由の剥奪を容認している締約国の中では未だ実践されている。これに関して、委員会は、14条はどのような場合であれ実際にあるあるいはあると見なされた障害を基礎として人が拘禁されうることをいかなる例外もなくゆるさないということを立証した。しかし、人が自傷他害の危険があるということも含め他の理由があるときには、いくつかの締約国の法制度では精神保健福祉法も含め、いまだ実際にあるあるいはあると認識された障害を基礎として人が拘禁されうるとしている。障害者権利条約委員会の法的判断による解釈として、こうした手続と実践は14条と矛盾する。
  2. 自傷他害の危険の主張を基礎として障害者を拘禁することを正当化している精神保健法 締約国のすべての報告審査を通して、委員会は人にあるとみなされた自傷他害の危険を根拠に障害者の拘禁を容認することは14条に反すると立証してきた。障害というレッテルに結びつけられた危険性あるいはリスクという推測に基づいて、障害者を非自発的に拘禁することは自由への権利に反する。例えば人がパラノイド統合失調症であると診断されたことだけを理由として、その人を拘禁することは誤っている。
  3. 刑事司法制度において訴訟能力のない人の拘禁 委員会は訴訟能力がないという宣言とそうした宣言を根拠に人を拘禁することは条約14条に反すると立証した。なぜなら彼あるいは彼女の、全ての被告人に適用されている適正手続とセーフガードの権利を奪うものだからである。
  4. 合理的配慮と監獄 犯罪のために懲役刑を宣告された障害者は、障害ゆえに拘禁条件が悪化することのないように、合理的配慮を受ける資格がなければならないと、委員会は考える。

原文は以下
http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=15183&LangID=E
訳 山本眞理

障害者権利条約委員会 12条一般意見草案

障害者権利条約委員会は条約12条法的能力と9条アクセシビリティについての一般意見草案を発表しました

条約の解釈基準となるものです

まだ草案であり、締約国、障害者団体、国内人権機関、非政府組織などに対して意見募集を行っていますが、意見募集の締め切りは来年末です。来年4月のセッションで障害者権利条約委員会で議論されることになります

しかしながらこの間の各国政府報告書に対する委員会の最終見解を見ても、日本政府報告書に対して、後見人制度と精神保健福祉法心神喪失者等医療観察法の廃止が求められることは確実です。したがって障害者基本法も、基本計画も見直しが迫られます

英文全文は以下からダウンロードできます
http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/CRPD/Pages/DGCArticles12And9.aspx

山本眞理の12条一般意見草案の邦訳はこちらからダウンロードできます
山本訳Article12