全国「精神病」者集団ニュース 2007年8月号

2007年8月発行の「ニュース」抜粋です。 一般定期購読は有料(年6回程発行1年分5000円)です。(会員の購読は送料も含めて無料となっております。なお、一部、省略している箇所や伏せ字にしている箇所があります。)

全国「精神病」者集団

ニュース


= ごあいさつ =

病者集団のニュースは多くの会員にとって読みやすいのだろうか?この問題は常にあり続けた問題だと思います。

見やすいニュースを目指し、今回はインタビュー記事を載せます。今後も反応次第で引き続き行いますので、ぜひ皆様も気軽に参加してください。

これから少しずつ、読みやすいニュースをめざします。

全国「精神病」者集団連絡先の変更です。発送名簿の変更をお願いいたします。
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パンフ紹介

シンポジウム

心神喪失者等医療観察法のある社会を改めて問う

「保安処分法施行1年心神喪失者等医療観察法のある社会を改めて問う」

06年7月15日集会のシンポジウムをまとめたパンフです。

シンポジスト

市野川容孝さん、池原毅和さん、大賀達雄さん 龍眼さん

B5 39ページ 300円


討論資料 新たな保安処分との対決へ

昨年の一行諮問により現在法制審議会で審議されている新たな保安処分に関する討論資料です。

発行:刑法改悪阻止! 保安処分粉砕! 全都労働者実行委員会

B5 42ページ


第一回 当事者インタビュー

Sさん 京都府 61歳 男性

今月号から当事者インタビューを行います。

(略)


署名にご協力を!!

ハンセン病基本法制定および開かれた療養所の未来を求める請願書名を同封いたしました。ハンセン病元患者の皆様は、新たな隔離法として心神喪失者等医療観察法制定阻止のために、多大なご協力をいただきました。私たち「精神病」者はハンセン病元患者への隔離問題について何も取り組めていなかったことは歴史的事実です。

いまさらということもありましょうが、ぜひ同封の署名にご協力をお願いいたします。署名はご家族でなさったとしても、住所欄は同上とは書かず同じ住所をきちんと書いていただけますようお願いいたします。またファックスでの署名は無効となります。署名用紙にある連絡先に郵送していただけますようお願いいたします。

100万人署名を目指しています。第一次集約は12月です。一人でもかまいませんぜひご協力を


こころ系の時代を生き延びる 全国「精神病」者集団の闘い

全国「精神病」者集団 運営委員 S.T.

1974年東京において催された「第1回全国精神障害者交流集会」の場で全国「精神病」者集団は結成された。その際の決議は、「保安処分新設反対、精神外科を禁止せよ、電気ショック療法に対する患者の拒否権を与えよ、自由入院を拡大せよ、今日の精神衛生法体制に反対する、優生保護法に見られる精神障害者差別に反対する、通信・面会の自由権を承認せよ」等であった。

今からみれば考えられないことだが、かつては「精神外科」手術、つまりロボトミーが精神病への治療としてかなり広汎に実施されていた。有名なところでいえば、詩人アレン・ギンズバーグの母親もロボトミー手術を受けている。また、ベイトソンの著書にも、ロボトミーを受けさせられる患者が示した最後の抵抗(ユーモア)が記されている。全国「精神病」者集団で精力的に活動している山本眞理が長野英子名義で出した『精神医療』(現代書館)にもロボトミーを受けさせられる患者の最後の訴えが生々しく描写されている。

ロボトミーほど野蛮ではないにせよ、現在でも電気ショック(電気痙攣)療法は難治性のうつ病などに対して実施されている。現在では全身麻酔の上施術するのが常識となっているが、かつては無麻酔であり、且つ懲罰的に用いられる場合があった。電気療法の是非については現在でも論争が続いている。例えば、先日破産した精神障害者の親の会ぜんかれんが出している通信に、神田橋條治が電気療法に肯定的な発言をしたのに対し、ばびっち佐野が抗議し、謝罪・訂正文が掲載されるという出来事があった。(神田橋條治の新刊は、抗議文も収録しているとのことである。)電気療法が全身麻酔の上で行われるならば、少なくとも苦痛はないにせよ、記憶障害が残るケースが多々あるというのもまた事実である。電気療法の是非に関して、当事者や専門家を含めた討論が行われることが望ましい。

全国「精神病」者集団は、犯罪を犯した当事者の救援や、予防拘禁=まだ犯罪を犯していないのに再犯の惧れがあるからとの理由で拘禁することへの反対・抗議活動を主に行っている。そして当事者団体であり、精神病者、神経症者、人格障害等とレッテルを貼られたことがある人や自分で自分を病者だと自認する人で組織が構成されている。代表は置かず、メンバーの民主的な討論で意思決定を行っている。

精神病、神経症、人格障害(この範疇には問題があるが)と診断されて精神科の治療を受ける人の数は1990年代以降、激増している。それは精神科への偏見が弱まった、敷居が低くなったという肯定的な変化からもきているだろうが、社会そのものの構造的変化も大きく作用していると思われる。自ら命を絶った有名な精神病者には南条あや、山田花子、二階堂奥歯などがいるが、こうした人達、特に南条あやは、かつてのサブカルチャーのエートスの中で自己形成し、結果的に死を選んだといえる。それは彼女の遺した日記などを読むとよく分かる。

或る人は、かつてのサブカルチャーのブームが残したのは、結局は膨大な数のメンヘラー(精神科に通院している人を指す、2ちゃんねる由来と言われている表現)だったと述べている。サブカルチャーと或る特定の人間類型の生成の相関関係については慎重に見定めなければならないが、服薬への抵抗感が減り、何か悩み事があれば抗不安剤・抗うつ剤を飲めばいいといった或る意味プラグマティックな態度が主流になってきているというのはいえると思う。そんな中で、薬物の副作用も考慮し、十全な自己決定をもって薬物と付き合わねばならないというのは当然のことだろう。肯定的な意見もあれば否定的な意見もあるが、薬物と自殺との相関関係も報じられたことがある。それが実証されるかどうかは別にして、薬と自分の心身との相性をよく吟味しつつ医者なり薬と付き合うというのは絶対に必要なことであろう。

精神科の薬も日々進化し、かつてのような副作用が強かったり依存度の強い薬ではなくなってきていると言われるが、よく知られているように、覚醒剤とほとんど変わらないリタリンという危険な薬も出回っている。また、ハルシオンのような普通の睡眠薬であっても、健忘を起こすこともある。

適切な服薬により、症状の悪化や再発を防ぐことができる、というのは事実だろうし、自らの健康にプラスの選択をすべきであることも言うまでもないだろう。だが、精神科領域は、自らの脳なり心という最も内奥のもの、最も重要なものを巡る政治の場でもあるのだ。サバイバルのために薬を飲むとしても、

薬に依存したり、薬のせいで破滅したりしないようにする必要がある。

私は暫定的に「こころ系」と呼ぶが、近年増大しつつある膨大な数の精神医療ユーザーには、精神病者なり精神障害者としてのアイデンティティがない人が多い。そして、そういう人達に無理にアイデンティティ獲得を強要することはできないであろう。このことは、木村敏も指摘した、精神病の軽症化傾向な

どとも関係している。かつてのような「典型的」な精神病者(例えば、人格が荒廃し一生を静かに病院で過ごすというような)は少なくなってきているのだ。だが、だからといって自立支援法のような悪法の精神を肯定するようなことは、決してあってはならない。精神障害は、かなりの部分社会環境の問題でもあるのだから、社会が責任をもってケアすべきなのは当然だ。ハンディキャップを負って生きるのは、日本社会はまだまだ厳しい社会である。そういう条件のもとで、医療としても経済的にも当事者を支援し助けるような制度が必要である。また、個々の病者自身の力=潜勢力を最大限発揮していく方向も必要であろう。つまり、それが養生(神田橋條治)ということである。養生は、ほとんどスピノザ~ニーチェ流の倫理、「良い」「悪い」の倫理(自分の体に合ったものが良いものであり、不適合なのが悪いものである、という、良し悪しをアレルギーのモデルで考える考え)と言える。われわれは、自己の本性=自然に従って十全に力を発揮して生きるべきなのである。それは端的にいって、自己の創造性や生きる力を最大限高める、表現する、ということである。

私は、「こころ系」の時代である現代、全国「精神病」者集団のような相互扶助的で闘争的なグループの役割はますます重要になると考えている。心ないし脳の病いなり機能失調がこれだけ広汎にある以上、サバイバルのために当事者同士何を為し得るか話し合える場が必要なのは当然だ。が、例えば共謀罪法案などは、そうしたピアサポートの場すら犯罪化するものであり(例えば、ピアカウンセリングの場で、「あの医者、気に入らないな。殴ってやろうか?」と誰かが言い、別の人が「そうだ、それがいい」などと応答すると、それだけで「共謀」が成立してしまう)、絶対に許されるものではない。また、われわれは自己の生存権を勝ち取らなければならない。具体的にいえば精神障害者年金や生活保護、さらに最終的には、ベーシック・インカム(基本所得)を勝ち取らねばならないのだ。経験がある人には分かってもらえるだろうが、現在の制度の下で精神障害者年金を取得するのは、実際に生活が困窮していても、かなり難しいことである。国の基準は、統合失調症を一級、躁鬱病を二級と定めている。だから、人格障害や神経症では、多くの場合年金は取れないのである。が、軽症であるとしても、生活や就労に支障をきたしているという現実もあるのだ。軽症例にまで年金を出すと、国家財政が破綻するという言い方をする人がよくいるが、それは事実なのか? むしろ、軍事費など不要なものを削減し、所得税の累進課税や法人税率アップなどで、福祉のための財源を捻出すべきだろう。そうしたことは拒否しつつ金がない、予算が破綻する、などと言うのは結局現状追認でしかない。われわれは、そうした反動的な意見に負けずに、断固要求を貫徹する必要がある。われわれは、精神障害者である以前に、先ず人間であり、生きているのであって、生の無条件肯定こそ最初になければならないのだ。

全国「精神病」者集団のウェブサイト(私設)

http://www.geocities.jp/bshudan/

長野英子のページ

http://nagano.dee.cc/

Wikipedia内の項目「精神外科」

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%9C%E3%83%88%E3%83%9F%E3%83%B

南条あやの保護室

http://www.nanjouaya.com/hogoshitsu

二階堂奥歯 八本脚の蝶

http://homepage2.nifty.com/waterways/oquba/index.html


福岡県の退院支援施設の取り組み

W.T.(こころの病の患者会・うさぎの会会員)

福岡では、九州各県で幅広く連動した要望活動もあっていますが、私たちは退院支援施設について県内の二つの団体、うさぎの会とクイナの会の連名で、福岡県に提出してきました。当事者3名で行きました。応対は担当の係長です。以下、ご報告です。

今現在、県内で退院支援施設の具体的な予定はない。

(いつ出てくるかはわからない)

いろいろな批判が出ている。全国的に動きはかなりにぶい。

県の取り組みとしては、甘木、朝倉地区で、社会復帰促進事業をモデル事業として今年度の新規事業として実施。

大阪や埼玉、静岡などと同様の事業。自立支援員も置く。ピアの支援大切だが、ピアの自立支援員は、今年度はまだない。

退院支援施設について、これまで県として病院敷地内のグループホームはだめだと言ってきたのに、それとの関係で問題は感じている。

実際にどこかで実施されないことには、良いも悪いも、今、判断はできない。

病院としては、施設より医療でみたほうが収入が多いので、病院がそんなに積極的に作りたいと言ってくるものではないのではないか。

県としては経費の負担は増える。経費からいえば積極的に推進という姿勢ではあまりない。

地域に精神障害への差別があり、家を借りるのも困難な状況がある。隔離の問題としては、当初から私たちも意識していた。

利害がいろいろとある中で、いろいろな関係機関がいろいろ支援策を出してくる。それぞれにチャンスを与えないといけない。

隔離施設になるおそれがあるからという理由で、作るべきでないと言うことはできない。

これから作る計画が出てきたら、批判されているようなこと(看板の書き換えである、新たな隔離となる、一生出られないなど)といったことにならないように、気をつけて見ていく必要がある。

入院医療の必要のなくなった人がいつまでも入院しているのはどうかということがある。

退院支援施設のすべてが悪というわけではないだろう。退院支援施設を必要とする患者もいるとしたら、良い支援をしていかなければならない。

ほかにも批判は来ている。これからの取り組みに生かします。

1時間、話をして、こちらは一貫して反対の立場で話しましたが、応対はおよそ以上のような返答でした。ていねいな対応でしたが、疲れました。終わって席を立って、めまいがしました。国が実施している以上、なかなか難しいですね。積極的に作ろうという感触ではないところは評価できそうです。


07年8月13日

福岡県知事 麻生 渡様

こころの病の患者会・うさぎの会

クイナの会

精神障害者の社会的入院解消についての要望書

日頃より、私たち精神障害者の福祉のためにご尽力くださっていることに敬意を表します。私たちは精神障害者が中心になって活動している団体です。

さて、精神障害者の社会的入院の解消が重要な課題となっております。社会的入院は社会に支援が不足しているため、長期におよぶ入院を余儀なくされているものであり、患者本人の努力だけでは解決できません。地域の中に必要な支援、ホームヘルプや住居の確保、食事の宅配サービス、外出の介助、見守りの介助、ショートステイなどが十分に整備されていません。地域支援を必要とする人がだれでも受けられるように支援体制を拡大、充実させてください。

さらに、問題解決のために精神科病院の敷地の中に「退院支援施設」を設置することにより、見かけだけの退院者を増やすことは大いに疑問です。

退院に向けて必要な準備はいろいろとあります。大阪の退院促進支援事業に見られるように、患者は在院のまま、安心して退院のために必要な支援をじっくり受けられるようにするのが本来の退院支援のあり方です。

退院させられ、「退院支援施設」に移り住み、退院への準備をするというのは矛盾した話です。「看板の書き換え」「新たな隔離の始まりとなる」との指摘を真摯に受け止め、莫大な予算を使っての特別な「退院支援施設」による施策は早急に凍結、中止されるよう求めます。

退院支援の本来のあり方を見失うことなく、大阪で実績のある退院促進支援事業をこそ、福岡県でも本格的に導入してください。

以上

こころの病の患者会・うさぎの会

代表 W

すでに「地域移行型ホーム」という名の精神科病院敷地内施設は昨年10月から作られており、「退院支援施設」については、知りえた限り、山梨の県立病院敷地内と香川の精神科病院敷地内に作られることになっています。東京では交渉の中で、都内では今のところ作られる予定はないと言明しています。

今後も各地で長期入院患者の退院支援に向けた有効な支援の仕組みを私たち自身の力で作り上げていくことが求められています。


【声明】

我々はリスクマネジメントの名の下に進行している監視社会を拒絶する

心神喪失者等医療観察法〔予防拘禁法〕を許すな!ネットワーク

2005年7月15日、心神喪失者等医療観察法が施行された。

2007年5月14日の国会質疑によると、指定入院医療機関の整備状況は、国立病院機構の医療機関として、現在、国立精神・神経センター武蔵病院を始め十か所が開棟して、二百八十床が使われている。四か所が建設中。また、都道府県立病院については、岡山県、大阪府、長崎県、東京都において建設あるいは建設準備中。

都道府県立病院の指定入院医療機関としての整備が進まない理由は、各都道府県により事情が異なり、一概には言えないが、一つは、自治体立病院の再編成計画や建て替え計画等により直ちに医療観察法への対応が困難であること、二つは、精神科救急、児童思春期精神医療など地域の精神科医療の充実を優先させたい意向があることなどの理由があるものと考えられる。

本法が施行された平成十七年七月十五日から本年の二月二十八日までの間に、検察官が行った本法による医療等を求める申立ては五百七十三件。うち四百八十七件につきましては裁判所の決定がなされ、そのうち十三件について申立てを却下する決定がされた。

申立てを却下する理由としては、対象者が対象行為を行ったと認められない場合と、対象者が心身喪失者及び心神耗弱者のいずれでもないと認める場合がある。

全国五十箇所の保護観察所の社会復帰調整官は、平成十五年度当初で五十六、それから十七年度に七人増員、十八年度にも七人を増員し、平成十九年度の予算で更に七人の増員が認められ、この増員分を十九年の十月以降に採用する予定。合計でその暁には七十七人となる。

現在までに最初から通院処遇という精神保健観察の処分を受けるという人が百人を超えていると思われる。これは、定員が280床だから、487-13-280=194件については、既に施設外にいることは計算すればすぐ分かる。

地域間格差や、公平性、透明性、論理整合性など多くの点で医療観察法は既に破綻していると考える。

こうした状況のなかで、今国会で、更生保護法案が採決された。少年法や道交法の被害者感情に配慮するとする、厳罰化も押し進められてきている。また、2006年7月には所謂1行諮問、法制審諮問第77号が出されており、現在法制審議会で審議中である。

以下に心神喪失者等医療観察法と更生保護法案の目的をそれぞれ挙げてみる。

心神喪失者等医療観察法:この法律は、心神喪失等の状態で重大な他害行為(他人に害を及ぼす行為をいう。以下同じ。)を行った者に対し、その適切な処遇を決定するための手続等を定めることにより、継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって、その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もってその社会復帰を促進することを目的とする。

そして少なくとも、194人が既に精神保健観察に付されている。

更生保護法案:この法律は、犯罪をした者及び非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより、再び犯罪をすることを防ぎ、またはその非行をなくし、これらのものが善良な社会の一員として自立し、改善更正することを助けると共に、恩赦の適正な運用を図るほか、犯罪予防の活動の促進等を行い、もって、社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを目的とする。

心神喪失者等医療観察法は刑法39条により完全責任能力が無いとされる精神障害者等に適用され、"もってその社会復帰を促進する"が目的であるのに対して、更生保護法案は、責任能力があり裁判に付された人に適用され、"もって、社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進すること"が目的である。いずれも、 "同様の行為の再発の防止"や"再び犯罪をすることを防ぎ、またはその非行をなくす"のが前提となっている。

重大な他害行為や犯罪、非行の再発や再犯の防止が主眼であることはすぐに分かる。

法制審諮問第77号諮問とは杉浦法務大臣が諮問したもので「被収容人員の適正化を図るとともに、犯罪者の再発防止及び社会復帰を促進するという観点から、社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否、中間処遇の在り方及び保釈の在り方など刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等についてご意見を承りたい。」というものである。

注目すべきは"刑事施設に収容しないで"、の部分である。

心神喪失者等医療観察法は行政処分であり、拘禁される先は、重警備の病院であり刑事施設ではない。処遇されるという点では同じであるが、治療を受ける義務が課される。

ところで、更生保護法案の31条2項には 「保護監察官は、医学、心理学、教育学、社会学その他の更正保護に関する専門的知識に基づき、保護観察、調査、生活環境の調整その他犯罪をした者及び非行のある少年の更生保護並びに犯罪の予防に関する事務に従事する。」と在り、矯正医療、更正教育のほか、あらゆる専門的知識が駆使され、これらが遵守事項、特別遵守事項と言う形で強制される。最近PSWが刑務所に配置されたのはそうした流れの一環である。

注目すべきは、心神喪失者等医療観察法で重警備の病院を出た精神障害者は保護観察所に置かれた保護監察官の下に入るという点だ。保護観察所に既に心神喪失者等医療観察法による社会復帰調整官と言う名のPSW等がいることは、ご存知のとおりである。

以上概観したように、前面にでているのは予防司法、予防行政とでも呼ぶべきものであり、本質はリスクマネジメントである。決して、犯罪を行った者や重大な他害行為をしたものと社会の共生や、個人の自由のためにある程度のリスクは社会が引き受けなければならないという思想ではない。ひたすら、安全、安心なのである。

1行諮問の際に言及されたのは、小児性愛、薬物依存などである。これらは、国際疾患分類ICD-10のF6及びF1である。つまり、これらが、精神疾患であるという意味だ。本人が苦しむならば、治療が必要である。法を犯すならば、刑罰が必要である。

ただし、我々はハッキリと言わねばならない。責任主義と罪刑法定主義を放棄するな。将来のリスクを勝手に判定するな。まだ起きてもいないことに対して、予防的不利益処分を科すな。リスク管理と称して、個人の自由を制限するな。行き着く先の監視社会を我々は否定する。

2007年5月


運営委員会活動報告

暑い毎日が続きますが、運営委員会は休みなく月2回の電話会議を継続しております。以下活動報告です。

1 日本障害フォーラム(JDF)関係

@日本障害フォーラムとして精神科病院敷地内施設問題にもう一度意見書を出すことを追求中

@6月13日に障害者権利条約推進議員連盟の総会があり、政府関係者およびJDF参加各団体も招かれて条約の批准に向けての意見交換が行われた。政府は邦訳および関係省庁との調整を行いっているところで年内にも署名したいという意向を明らかにした。JDFからの意見書および報告についてご希望の片は窓口までご請求を。コピー代・送料実費でお送りいたします。インターネットをお使いの方はメールでお送りいたしますのでメールでご請求ください。

@内閣府から障害者基本法に基づく後期障害者計画についてJDFに意見表明を求められ、7月30日に全国「精神病」者集団もヒアリングに参加。前期障害者計画における退院促進の総括、および障害者人権条約に基づく障害者施策の見直しと障害者団体の参加を求めた前提の上で、政府の求める以下のポイント(1.啓発交流分野 2.教育・育成分野 3.雇用・就業分野 4.生活支援・保健・医療分野 5.生活環境分野 6.情報・コミュニケーション分野ヒアリング)ついて意見表明。当日提出した文書は以下に掲載中。政府は聞き置くという態度でなんら回答を示さなかった。アリバイ的な場であることを今後も問題にしていかなければならない。

全国「精神病」者集団の意見書全文

http://nagano.dee.cc/070730naikakuhu.htm

@障害者人権条約についてJDFと政府との意見交換 8月9日

JDFとしての意見書を提出 詳細は次号に報告

@民主党の障害者自立支援法の見直しについてのヒアリング 8月8日

全国「精神病」者集団としては以下文書提出


「民主党障害者自立支援法フォローアップ作業チーム」で検討していただきたいこと

全国「精神病」者集団 運営委員 JDF担当 S.A.

1.利用者費用負担について、世帯分離が進まないため、結果的に自立支援医療の負担が増している。これは税の障害者控除との絡みもあると思われる。

2.そもそも、精神障害者が利用できる、リソースの類型や絶対量が少ない。またガイドヘルパーは待ち時間に支給されないということで、きわめて重要な通院に事実上使えない。

3.三障害統合と言っておきながら精神は別扱いになっているという実態がある。

4.施設や病院から地域へ、というノーマライゼーションの理念に反して、特定医の制度を設けたことにより、逆方向のベクトルが強化されており、以前は非合法に行われていた実態を自立支援法により合法化した。本来当事者本人を簡便な手続で強制的に拘禁する保護入院、それを担保する保護者の制度は、障害者人権条約にてらしても、廃止の方向で、検討されるべきである。

5.医療観察法、精神保健福祉法、自立支援法が、密接不可分、一体的に運用されており、三障害の各法はそのままに、障害者の範囲を定めるとした付則、障害者の整合性の取れた定義を検討するとした付帯決議は手付かずのままである。

6.医療観察法による、所謂、手厚い医療は年間1人あたり、約2200万かかるが、これは一般精神病院に入院する費用の5倍以上であり、犯罪に当たる行為をしなければ劣悪な医療しか受けられないという倒錯した現実がある。又、精神病床は全病床の2割を占めているが、掛けられている医療費は全病床の5%である。1人の精神科医が診る患者は一般病床の3倍であり、コメディカルの数も少なく抑えられているという実態は良質な医療と早期の社会復帰には不適当である。

7.退院促進について、国は予算の裏付けのある、地域社会への復帰の計画を示していない。数値目標だけが先行しており、その数値も少なく見積もられている傾向がある。

8.日本は人口1万人に対して27人が精神病院に入院しているが、これは世界一高い数値であり、少なくとも1万対15まで病床を削減する具体的な方策を検討していただきたい。

9.精神障害者に特性に配慮した雇用、所得保障(基礎年金のあり方等)を検討していただきたい。現状働けると、基礎年金が切られたり、手帳の級が下がったりするので働くというインセンティブを疎外している。

10.精神保健福祉の分野に、もっと当事者の働ける分野とそれを担保する制度的な保障を検討していただきたい。

11.問題となった、精神病院施設内の退院支援施設は白紙撤回していただきたい。

12.自立支援法、精神保健福祉法、医療観察法を、障害者人権条約の視点と水準から、全て見直していただきたい。

2007年8月8日

2 人権市民会議に参加

人権市民会議は人権にかかわる法制度のあり方を抜本的に検討し直し、新たな人権保障のシステムを築くため、市民の側から提言をしていこうと立ち上げられた団体です。ここに全国「精神病」者集団として参加することにしました。障害者人権条約の国内履行に向け、広く障害者団体のみならず、さまざまな被差別者の団体や人権関係の他団体との共闘連帯を目指してきたいと考えます。

(略)


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